母親の愛とプライド
私は子供の頃から母に愛され、そして甘やかされて育てられてきました。
私が小学校の頃、父親がある事情から多額の借金を背負ってしまい、県外に出稼ぎに行くことになりました。
なので私の幼少期は、家族全員がひどく貧乏な生活を送っていました。
1円玉や5円玉を集めて近所のスーパーに50円の袋ラーメンを買いに行き、晩御飯にしたこともありました。
料金が払えなくて電気やガスが止まったことも何度もあります。
それくらい困窮した生活を送らざるをえませんでした。
そんな生活でしたが、私の母はできる限りの範囲の中で、私を甘やかせてくれたと思います。
小・中・高校とすべての修学旅行に行くことができ、良い想い出を作ることができました。
誕生日に欲しいといったスーパーファミコンの本体を、買ってくれたこともありました。
中学でサッカー部に入った時、ユニフォームやスパイクなど、必要な備品を一式、揃えてくれたりもしました。
普段の生活が厳しかったのに、私への貯えというか、そういうお金は一生懸命に働いて、用意してくれていたのだと思います。
そんな母親だったので、食事や家事やゴミ出しなどすべて母が一人で行い、私は19歳で一人暮らしを始めるまで、一切の家事をした経験がありませんでした。
それに私は何か失敗して母親に怒られたという経験が一切ありませんでした。
今思えば、もしかしたら母は家事や食事などはすべて女がやるもの、という昔ながらの考え方を実践していただけなのかもしれません。
そんな甘やかされて愛されて育った私は、19歳に家を出ていくことになります。
そのきっかけは「母親のプライド」です。
高校生になった私は、バイトを始めました。
その理由は生活が苦しい家にお金を入れる、とかそういう考えではなく、単純に自分のお小遣いが欲しかったからでした。
この時の私は甘やかされて育ったせいか、自分でものを考える能力に乏しく自立するということからは相当にかけ離れた甘ったれでした。
なので家が金銭的に苦しいのは分かっていましたが、家の生活費は母親がなんとかしてくれるだろう!とまだまだ母親に甘える気、満々だったと思います。
親が子を甘やかせて育ててしまうと、子供は自立できない甘い子に育ちます。
このことは私が大人になってから、幼少時代を振り返った時に気づいたことです。
当時は甘えることが当たり前というか「普通のこと」と思い込んでいるので、家事や掃除、ゴミ出しなど、何でも母親がやってくれていることに、なんの疑問も持たなかったですね。
そんな甘々の私が初めてのバイトを悪戦苦闘しながら続けることができ、人生初の給料をもらった時は本当に嬉しかったです。
初めて自分だけの力で何かを成し遂げた感覚といいましょうか?
それぐらい高校時代にバイトでお金を得るというのは、大きいことだったと思います。
その初給料の大半は、自分のお小遣いに充てるつもりで財布に入れて、残りのほんの一部を母親に家賃として渡した記憶があります。
そんな人生初の給料で何を買おうかと、楽しみに考えていた私でしたが、しばらくして悲しいことが起こります。
ある日、自分の財布を見たところ、あきらかにお金が減っていました。
自分で何かに使ったかな?と考えてみても一向に思い当たる節がないのです。
そこでちょうど近くにいた母親に、何気なく財布に入ってたはずのお金のこと知らない?と聞いてみたところ。
「ああっ、ちょっと〇万円借りたけど、必ず返すから」
という答えが返ってきたのをハッキリ覚えています。
「えっ?一言、言ってくれたらもっと家にお金を入れたのに、なんで勝手に黙って人の財布からお金を取ったの?」
母が黙って財布からお金を取ったことが信じられなかったので聞いてみると、
「えっ?だって言いにくかったし、あとで返せば良いと思って」
この言葉を聞いて私はとてもとても悲しくなった記憶があります。
家が苦しいのは知ってるので、直に言ってくれればお金をもっと入れることもできたのです。
しかし母親からはどんな時も、催促の相談は一切ありませんでした。
家の生活も苦しかったので、私がバイトを始めることを知って、家にたくさんお金を入れてくれることを期待したのかもしれません。
でも実際に私が渡した金額が、母の想定よりもはるかに少なかったのでしょう。
裏を返せば母の期待を裏切ってしまったとも言えるかもしれません。
そこで母がとった行動が、私に内緒で財布から黙ってお金を借りる=取るという行為だったのは、例えどんな理由であれ、許されることではないと今も思っています。
なぜ今まで私のことを甘やかして育ててきた母が、急にこんなことをしたのか?
考えてみると、やはりバイトでお金を稼ぎだしたというのが大きかったのでしょう。
母親の中で、自分でお金を稼ぐ=自立=大人だったかは分かりませんが、これまで私のためにいろいろな物を買ってくれたり、修学旅行費を出してくれたり、学費を払ってくれたりしていた訳で、その分を「回収」する感じだったのかもしれません。
あとは単純に生活が苦しかったので、悪いと思いつつも取ってしまったという可能性もあります。
次になぜ私に相談も無く「無断でこっそり」財布からお金を取ったのか?
これは「言いにくかった」という本人の証言は、嘘ではないと思います。
言いにくかったのは、恐らく「母親としてのプライド」です。
母親は私への愛情が深かったので、身の回りのことをすべて行ってくれていました。
つまり私(息子)の事は、すべて自分(母親)がやってあげないと成り立たない。
そんなことを思っていた気がするのです。
心配してくれていたとも言えますが、逆に考えれば「息子は私がいないと何もできない」とも言えます。
何もできないと思っている息子に、頼み事、特にお金の相談や工面をお願いするのは、面倒を見ている側の自分(母親)のプライドが許さなかった気がするのです。
母親はいつも強気な人で、他人に弱みを見せるのが下手な人でしたし、滅多に謝るような人ではなかったですので。
結局、この時はすごく悲しい気持ちでしたが、母の言葉を信じてお金を貸すことにしました。
でも母が借りたと主張するこのお金は、返ってくることはなかったです。
それどころかバイト代が月末に入ると毎月とは言わないまでも、度々お金が取られたりするようになります。
母は相変わらず相談してくることも無く、こっそり財布から〇万円を取っていきました。
もちろん「借りた」という主張と「言いにくいから」という理由で、黙ってお金を取っていくのです。
私はその度、悲しくなり時には母に怒ったりしたのですが、母は辞めようとはしませんでした。
私が高校を出てフリーターになりバイトを本格的に始めても、この行為は続きました。
この頃には財布に入れておくと簡単に取られると思い、財布を隠したりお金だけを本のページの間に挟むといったまるで「へそくり」みたいなことをしていました。
それでも母はそれらを見つけて、お金を抜き取っていくのです。
これにはビックリしました。執念と言いましょうか?
最終的にはスーパーファミコンのソフトの箱の中にお金を隠したりしましたが、それすら見つかってしまいました。
こんなことがずっと続いたので、さすがに母を信じることができなくなってしまいました。
銀行口座を作ってからは銀行口座に貯金して一人暮らしするお金が貯まったらすぐに家を出ました。
一人暮らしをすると母に伝えると、ビックリしていましたが、少し悲しそうな表情もしていたのが印象的でした。でも応援もしてくれました。
一人暮らしすることで家事や食事、洗濯や掃除やゴミ出しなど、今までやったことなかったことを自分一人でやらざるをえなくなりました。
最初は相当、苦労しましたが、これが自分自身の「自立」につながることになります。
結果的には自分にとって非常に良い出来事になったと思います。
今でも思うのですが、あの時、母が黙ってお金を取ったことは、やはり人としておかしいと思っています。
ただ一言いってくれればいいだけの事だと思うのですが、そこはやはり「母のプライド」が邪魔したのかな?と今では笑い話にできるくらい、母とは仲が良いので安心してください。
はじめまして!40代サービス系会社員のオカモトといいます。
高知県生まれの高知市育ち。
性格は社交的で明るいと思います。
価値観は貯金は心の余裕を産む。
人は基本みんな個人・他人・孤独。実は誰もが一人きりで生きてる人生。
でも二人でいる方が楽しいし三人四人で共感を生めばもっと楽しい人生になる!
社会は良くも悪くもドンドン前に進んでいます。
だから自分自身も成長していかないと社会に置いていかれます。
なので自分を常に成長させることを怠らない人になりたい。
母親の愛とプライド