やんちゃ坊主の末っ子「あみくん」
思い出すと震えて、冷や汗が出る経験をしたことがあるだろうか。私にはある。
小学校4年生の時、我が家に犬がやってきた。家族からは、「あみくん」と呼ばれていた。エアデールテリアという種類で、成犬になると35kgにもなる大型犬だ。
やんちゃな性格で、いつも物を壊したり、暴れていた。今となっては可愛かったなと思うが。
そんなあみくんのお散歩に、姉と母と3人で行くのが毎日の日課であった。お散歩コースは、大通り沿い。途中で、歩道橋を渡る道のりだった。
ある夏の暑い日、皆で散歩に出かけた。あみくんは、その日も色んなものに興味津々。いつも通りはしゃぎまくり、道行く人の注目を浴びていた。帰路に着くために歩道橋を渡り、階段を降りようとしていた。
突然、あみくんが階段を駆け降り出した。リードを持っていたのは姉。ぼーっとしている性格である。その時も何か別のことを考えていたらしい。
なんと、あみくんを繋いでいるリードを離してしまった!あみくんは駆け降りている。車がビュンビュン走る、大通り目がけて。
私は幸いにもあみくんの前を歩いていた。あみくんが1人で走り出している。その瞬間が、スローモーションのように見えた。
咄嗟の判断で、あみくんを抱きしめた。あみくんの毛はツルツルしていたが、死に物狂いでなんとか捕まえることができた。まるでラグビーのタックルのようだった。捕まえられた瞬間、震えて力が抜けた。
私があみくんの前を歩いていなかったら、どうなっていただろう。あの時の臨場感は、今になっても忘れられない。思い出すとドキドキして、冷や汗が出る。
その後、あみくんはすくすくと育ち、立派な成犬になった。今でも、暑い日に散歩をしているやんちゃな犬を見かけると、あの時のことを思い出す。そして、心臓の鼓動が早くなる。
本当に忘れられない経験だ。
東京都在住の25歳女性です。教育熱心な親の下で育ちました。上へ上へという思考で高校・大学と進み社会に出ましたが、体を壊したことをきっかけに自分の価値観を見直すようになりました。今では「無理をしない・楽しく生きる」をモットーに、カフェでのんびり働いています。
趣味は愛犬の世話・サイクリングです。
やんちゃ坊主の末っ子「あみくん」