橋の上の捨て猫
朝の学校への行きかえりにいつも通る橋がある。コンクリート造りで灰色がかったその橋は、下をのぞけば10m程度の高さがあり、下にはアスファルト舗装の道路が走っていた。
その橋の真ん中で、小さいが、耳に押し込んでくるほどの声量で鳴いている動物がいる。猫だ!
小さいころから私は動物を飼うのが好きだった。犬も、猫も、飼っていた。バッタやトンボも親しみやすく、よくつかまえていた。だが、自分で世話をしたかというと、そうではない。いつも家族が世話をしてくれていた。私はただかわいがるだけでよかった。
橋の上の猫は、私が近づくと、思いっきりの声で鳴いて、私にすがりついてきた。私も無意識に猫を懐に抱いて、橋の欄干の上に置いた。猫は体を震わせ、必死に鳴いている。その時、ふと思いついたことがある。このまま下に落とせばどうなるだろう…私は猫に手をかけた。
子どものころ、生き物とのかかわりから、私は何も学んでいなかった。人は、信頼されればそれに応えたいという気持ちがある。あの時、私にすがりついてきた子猫は、私を唯一の頼りとして信頼していたに違いない。もし、あの時、私が橋の下に子猫を突き落としていたなら、私は人ではなくなっていた。
シニアとよばれる年代に差し掛かったのだと、自分でも驚いています。知らない間に年を重ねて今に至ったのだけれど、何もしてこなかったとの感が強く私の心を突き上げます。
チャレンジするのが好きで、また人と比べられるのが大嫌い。自分の宝物を持ちたい。そんな思いでこのサイトを訪れました。心に残るエポックを残せるように、記憶をたどりながら、また、読み応えのあるものを残していきたいと考えています。
橋の上の捨て猫