クイーン来日公演
私は音楽が大好きです、その中でも特に好きなのがロックバンドのクイーンです。中学生になってからはほぼ毎日彼らの音楽をカセットテープで聴いて、ギターでコピーしてきました。そして高校1年が終わる頃の冬に、そのクイーンが日本にやって来るというニュースが飛び込んで来ました。
クイーンの来日公演は1982年にもあったのですが、この時は諸事情あり行くことができませんでした。しかし、今度は違います。私は大喜びで親しい友人達に声をかけまくりましたが、残念なことに誰も行くとは言ってくれません。
これには理由があり、この来日公演の少し前に発表されたThe Worksというアルバムが友人達の間では不評であったのに加え、ボーカルのフレディマー・キュリーはスタジオ録音では滅茶苦茶上手いがライブでは高音域に無理がある、と当時から言われていたのです。
私は仕方なく一人で行くことを考えていましたが、中学時代私とは違うバンドでベースを弾いていた違う高校に通うM君が、一緒に行きたいと伝えてきました。M君は運動神経が良くバレーボール部なんかに入っているのにバンドもやっているという、運動音痴でネクラな私からすると苦手なタイプであり、仲も良くないと勝手に思っていたので、私はあろうことかその誘いを一回断ってしまいました。しかし、これは両親に滅茶苦茶怒られて、渋々謝って一緒に行くことにしました。
そして1985年5月8日、高校2年の春に念願のライブの日がやってきました。来なかった薄情な友人達の予想を見事に裏切り(?)、その演奏はとても素晴らしいものでした。これにも当然理由があります。
この時期のクイーンはアイデアの面ではある種の行き詰まり状態にあったと思いますが(個人の主観です)、演奏の面では完全に円熟期に入っていたのです。少なくとも私はそう思っています。特にドラムのロジャー・テイラーの成長が著しく、初期の演奏と比較してドラムがタイトになった分バンド全体のサウンドが引き締まっていました。フレディのボーカルは確かに高音域を一部下げて歌っていましたが、実際に生で聴くとそれ以上に豊かで艶やかで、完璧なバンド演奏の上で美しく響いていたことを今でもはっきりと思い出せます。映画ボヘミアンラプソディの中でハイライトになっている伝説のライブエイドの演奏が1985年の7月13日ですので、この時の来日公演でもいかにクオリティーの高い演奏をしていたかが想像ができると思います。
また、クイーンの演奏に感激するのと同時に、M君のことを勝手にこんな人だと決めつけて避けていた自分を大いに恥じました。一緒に茨城の田舎から東京まで行ってみると彼はとても細かいことに気がつく優しい人で、高校生が深夜に一人で東京から帰ってくるのは危ないから無理にでも誘ってくれたことがよくわかりましたし、何よりも素晴らしい音楽が目の前で繰り広げられていることをしっかり感じ取っている姿を見ると、この人は自分と何も変わらない、同じ人間なのだということがはっきりわかったのです。帰りの電車では、二人で中学時代の話など楽しく盛り上がりました。
良い音楽には人と人を繋ぐ力があると思います。人はそれぞれ思想や好み、性格等様々な違いがあり、それはとても大切で尊重されなければならないことですが、それと同時に奥底では皆そんなに変わらないわかり合える存在。そんなことをこの時のライブから、やんわりと学んだと思います。
また、このクイーン来日公演はフレディ・マーキュリー最後の来日公演となり、私にとっては彼の肉声を聴き生の姿を見た最初で最後の日となりました。そんなこともあって、この日は私にとって生涯忘れられない一日となったのです。
(フレディー・マーキュリーは1991年11月24日にエイズによる免疫不全に伴う気管支肺炎で他界しています)
はじめまして、茨城在住の54歳男性です。
中学生の頃から音楽が大好きで、部活のブラスバンド、友人とのロックバンド、大学に入ってからはジャズのビッグバンド、と経験した挙げ句に音楽家を目指して音大に入り直したりしましたが夢はかなわず・・結局歳だけとってしまい、恥ずかしい人生をおくっております。
こんな私にも人生の大切な思い出はいくつかありますし、将来自分で読み返すことがあれば楽しいかなぁ、なんて思います。
よろしくお願いします。
クイーン来日公演