度重なる転居の経験
ついこの前まで、夫の仕事の都合で何度も転居をくり返しました。
わずか1年でまた転居、という経験も多々ありました。
行く先々で生活のためにパートの仕事をはじめ、そこで少しずつ会話を交わせる相手も増え、新生活は順風満帆!と感じていました。
しかし、
「ようやくキャリアも積めてきたかな」
「友だちもできてよかった」
なんて日常に高揚感や安心感をおぼえた頃に、突然の辞令。
今まで積み重ねたキャリア・人間関係が、その瞬間にすべてなくなってしまうんです。
まるで、砂の城でも作っているかのような人生でした。
「何回も経験したんだ、こんなのもう慣れた」
表面上はそう思っても、どこか心の奥に引っかかるような、なんとも表現し難いこの感覚。
あと何回経験すればいいんだろう…。
終わりの見えない生活に、途方に暮れた日もありました。
「どんなに喜ばしい理由だとしても、環境が変わることは多かれ少なかれストレスを伴う」と聞いたことがあります。
務めたパート先がブラックだったり、人間関係のトラブルに巻き込まれたり、さまざまな不幸が重なったにもかかわらず誰にも助けを求められず、八方塞がりだった時期もありました。
長年耐え忍び「絶対に出ていくんだ!」と願っていた環境からようやく脱出できると決まり、報せを受けたときはホッとしました。
しかし引っ越しの日が近づき、いざ環境が変わるとなると怖気づいてしまった自分がいました。
環境が変わることへの不安・恐怖感が、自分の中で知らないうちに積もっていたのでしょうか。
不幸が重なる日々にも、どこか居心地のよさを感じていたのかもしれません。
新しい土地に引っ越してから、しばらく抜け殻のような日々を過ごしました。
さまざまあったものの、過ぎてしまえばすべてがいい思い出となりました。
ただ単に美化しているだけかもしれませんが…。
「あの町はどうなったかな?」
「みんな元気かな?」
なんて、折に触れて思い出します。
思い出の土地を訪ねたくても、このご時世なのでそうもいかず…。
しかし、今まで巡った場所から得た経験が私を支えてくれると信じて、前向きに生活していこうと思っています。
昭和末期生まれ、世間一般とは一味違う経験を積み重ねる。
環境が目まぐるしく変化し、まるで旅するように暮らした時期もあった。
しかし、ようやく自然豊かな土地でおだやかな日常を過ごしている。
ただ生活しているだけなのに、ここまでドラマティックな人生は他にはないのでは?と思えるくらい、数々の思い出がある。
度重なる転居の経験