侮りがたし、幼き賢者よ
近所の小さな公園は、陽当たりがよくて、その周囲にめぐらされている植え込みが寒風を受け止めるので、天気のいい冬の寒い日などは、小春日和とでもいいたくなるほどの陽だまりになります。散歩の相棒(愛犬)と一緒に出かけるのですが、気分転換には絶好の“ほんわか“スポットなのです。ソフトボールの内野がギリギリで収まるくらいの小さなグランドに、鉄棒、平均台、滑り台などの遊具が置かれています。相棒とわたしは、そこを何週かして、時間にして15分くらいだと思いますが、気が済んだら日陰の帰り道をいそぐのがほぼ日課になっております。去年のちょうど今頃、正月休みが明けて少しして、いつも通りに相棒と公園に着いてみると、低鉄棒で逆上がりの練習をしている男の子がいました。幼稚園か、小学一年生かといった年恰好の子で、何度も地面を蹴っては見るものの、脚がうまく鉄棒の向こう側にいってはくれませんでした。『違う、コツは腕のほうだ。地面を強く蹴ったら、鉄棒をグイっと自分のほうに寄せるんだ』老婆心ながら、そんなアドバイスをしようかと思っておりましたが、ここはグっとこらえて、彼の様子を見守りました。せっかく一人で努力してるんですから。手柄の横取りになんてできません。彼の額にはうっすらと汗、頬は赤くなっていて、どれだけ頑張っているかがわかりました。しばらくすると、クルリと、ついに一回転。多少強引でしたが、見事に回りました。コツを掴んだのでしょう、その後はスムーズな逆上がりができていました。思わず近づいて、彼に声をかけてみたくなり『すごいね、どうやったらできたの?』と、たずねてみました。帰ってきた答えは、『うん、何度も、何度も、頑張ってやって、そうしたらできたの』でした。意外でした。